熱中症対策で逆効果? ペットボトル症候群に注意

2025年6月21日夏至の翌日、早速知人から「トレイルラン中に熱中症になりリタイアした」と聞きました。
急に暑くなり「熱中症が心配」「何をすれば予防できるの?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、熱中症の症状や応急処置、水分補給の方法から「ペットボトル症候群」の注意点まで、具体的な対策をわかりやすく解説します。自分や家族、まわりの人を守るためにもぜひご一読ください。

熱中症とは?

「熱中症」は、高い気温や湿度で体内の水分や塩分バランスが崩れ、体温調節などの働きがうまくできなくなることで起こる体調不良の総称です。
暑い場所に長くいると血圧が下がり、めまいや立ちくらみを起こす「熱失神」
汗と一緒に塩分が出て血中の塩分濃度が低下することにより、こむら返りや筋肉痛、けいれんする「熱けいれん」
大量の発汗で脱水が進むと、全身のだるさ・頭痛・吐き気・嘔吐などが起こり、放っておくと意識がもうろうとしたり、手足の運動障害、高体温などの症状が現れる「熱射病」になります。
重症になると命に関わるため、早めの対処が必要です。

なぜ今、熱中症が増えているのか?

近年、熱中症で救急車で運ばれる人が増えています。
昔よりも夏の気温が高く、夜も暑さが続くため、クーラーを使わなかったり、マスクをつけたまま活動したりすると、体に熱がたまりやすくなります。
高齢者は暑さや口の渇きを感じにくかったり、子どもは体調の変化に気づきにくかったりするため、特に注意が必要です。
さらに、水分補給を後回しにする習慣も、熱中症のリスクを高める原因となります。

熱中症が起こりやすい場所と環境

熱中症は外で運動しているときだけでなく、室内で起こることも少なくありません。
特に風通しが悪く、湿度が高い場所は注意が必要です。
たとえば、エアコンを使っていない室内、締め切った車の中、キッチンや浴室なども危険な環境となります。

また、アスファルトや運動場など、太陽の熱をためこみやすい場所も注意が必要です。
熱中症はどこでも起こりうるため、こまめに室温を確認したり、水分補給を心がけることが大切です。

熱中症の症状と受診すべきタイミング

熱中症の初期症状(めまい・だるさ・汗の異常)

熱中症の初期症状として、めまいや体のだるさ、汗の異常などが見られます。
これは、体温を下げるために汗をかき続けることで、体内の水分と塩分が不足し、体のバランスが崩れるためです。

たとえば、立ち上がったときにクラッとしたり、いつもより疲れやすく感じたりします。また、暑いのに全く汗が出なかったり、逆に異常に汗をかいて止まらなかったりするのも危険なサインです。
こうした初期症状の段階で気づいて、涼しい場所で休んだり、水分と塩分を補給したりすることで、重症化を防げます。

熱中症の進行症状(頭痛・吐き気・筋肉のけいれん)

熱中症が進むと、だるさだけでなく頭痛や吐き気、筋肉のけいれんといった症状が出てきます。
体内の水分や電解質(塩分など)のバランスが崩れ、体がうまく働かなくなってきている状態です。

頭がガンガン痛む、気持ち悪くて食事が摂れない、足や腕がピクピクけいれんする、などの症状が見られます。
これは、体がすでにかなりのダメージを受けているサインです。
すぐに体を冷やし、水分だけでなく塩分も含まれた経口補水液で対応しましょう。

熱中症の重症症状(意識障害・けいれん・歩行困難)と受診の目安

熱中症が重症化すると、意識がもうろうとしたり、突然けいれんを起こしたり、自分でまっすぐ歩けなくなったりします。
声をかけても反応がなかったり、話していても言葉がはっきりしなかったり、フラフラして倒れそうになっている場合も非常に危険です。
このような状態では、自分で水分を摂ることもできなくなるため、医療機関での処置が欠かせません。

「水分を自分で摂れない」「症状がどんどん悪化している」「声をかけても反応が鈍い」などの状態がある場合は、命にかかわる可能性もあるため、救急車を呼びましょう。

夏場の脱水が引き起こすのは、熱中症だけではありません。
「喉が異常に渇く」「何度もトイレに行く」「体がぐったりして動けない」といった症状が続いている場合は、ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)など他の病気の可能性もあります。
手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないなどの症状が出たら、脳梗塞の可能性も考え、早めに医療機関を受診しましょう。

熱中症の予防法

こまめな水分補給と塩分補給

熱中症を防ぐためには、水分と塩分をこまめに摂ることが大切です。
汗をかくと、水分だけでなく体に必要な塩分やミネラルも一緒に失われるからです。

水だけを大量に飲むと、かえって体のバランスが崩れてしまうことがあります。
特にたくさん汗をかいたときは、塩分も一緒に摂れる「経口補水液」などを使うと効果的です。
喉が渇いていなくても、30分から1時間ごとに少しずつ飲みましょう。

日常生活でできる暑熱順化

「暑熱順化」とは、暑さに少しずつ体を慣れさせることです。
これができていると、汗をかきやすくなり、体温をうまく調整できるようになります。

暑さに急にさらされると体がうまく対応できず、熱中症になりやすくなるため、軽い運動(気温が高くなる前からやっておくことが望ましい)や入浴などで体を暑さに慣らしていくことが大切です。
エアコンに頼りすぎず、適度に汗をかくことで夏の暑さに強い体をつくることができます。

夏の疲れ・食欲対策におすすめの食材

夏の暑さで食欲が落ちたり、体がだるくなったりする「夏バテ」や「熱中症」の予防には、「梅干し」がおすすめ。

梅干しには汗で失われやすい塩分が含まれており、クエン酸も豊富で疲労回復や胃腸の働きを助けてくれます。
酸味があることで、食欲がないときでもごはんが食べやすくなり、結果としてごはんに含まれる水分も補給できるのです。
ほかにも、きゅうりやトマト、スイカなどの夏野菜は水分とミネラルが豊富で、体を内側から冷やす効果もあります。

ゴーヤ(苦瓜)、レタス、ビワ、オクラ、冬瓜などお住いの地域で旬のものをとりいれましょう。

胃腸の調子がよくない方は、味噌汁やスープなどで温かいものを摂るのもおすすめです。
毎日の食事に梅干しを加えたり、お茶に梅干しを入れて飲んだり、夏野菜を取り入れたりして、暑さに負けない体をつくっていきましょう。

服装と環境から調える

熱中症は屋外だけでなく室内でも起こるため、服装や環境を工夫して、体に熱がこもらないようにすることが大切です。
暑いときは通気性のよい、ゆったりした服を選びましょう。
色は黒より白やベージュなどの明るい色の方が熱を吸収しにくいです。
また、帽子や日傘を使うことで、直射日光から体を守ることができます。

扇風機やサーキュレーターなども活用しながら、室温は28度以下を目安に調整しましょう。
日当たりがよい部屋では、カーテンやすだれを活用するのもおすすめです。
服や環境を調整することで、体への負担を減らしましょう。

通勤・通学・外出時の熱中症対策

通勤や通学、屋外でのお仕事などで長時間暑さにさらされる人は、保冷剤や冷却タオルを持ち歩いたり、日陰を選んで歩いたりする工夫をしましょう。
マスクの着用により体温が上がりやすくなるので、可能であればマスクを外すのも有効です。
また、出かける前には必ず水分を摂っておき、途中でもこまめに飲めるように、飲み物を持っておきましょう。

熱中症の応急処置と水分補給の注意点

熱中症になったらすぐにすべき3つの対処

熱中症の疑いがあるときは、できるだけ早く正しい応急処置をすることが大切です。
体にこもった熱を下げ、重症化を防ぐための対処法3つを覚えておきましょう。

①「涼しい場所に移動する」
日陰やクーラーのきいた室内など、暑さから離れることが最優先です。
②「衣服をゆるめて体を冷やす」
服のしめつけをなくして、熱を逃がしやすくし、氷のうや保冷剤、冷たいペットボトルで体を冷やしましょう。
特に首のまわりや脇の下、足の付け根を冷やすと効果的です。
③「水分と塩分を補給する」
水分と塩分を同時に補給するには「経口補水液」が効果的です。
水・塩分・糖分のバランスが体に吸収されやすいように作られており、脱水状態から早く回復するのに役立ちます。
経口補水液がなければ、水と塩でも構いません。
もし本人がうまく飲めない場合、無理せず医療機関に相談、または受診しましょう。

ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)とその危険性

スポーツドリンクは、運動中やたくさん汗をかいたときにエネルギーと水分を同時に摂るための飲み物です。
糖分が多く含まれているため、運動していないのに飲み続けると血糖値が上がりやすく、体にさまざまなサインがあらわれます(ペットボトル症候群や「清涼飲料水ケトーシス」と呼ばれる)。

特に糖尿病の人(診断を受けていない、自覚していない人を含む)や糖尿病予備軍の人は注意が必要です。体がうまく糖を使えず脱水や循環不全、血液が酸性化したり、電解質のバランスが崩れたりして、全身の臓器機能障害を引き起こします。

最初はなんとなく喉が渇く、体がだるいといった軽い症状でも、異常に喉が渇いて何度も飲み物を飲んだり、トイレに行く回数が増えたりします。頭が重く感じたり、吐き気が出ることも。
さらに症状が悪化すると意識がもうろうとし、生命に関わることもあります。
暑くなると甘い飲み物を欲する機会が増えますが、飲みすぎると食欲も減退しやすいので気をつけましょう。

安全な水分補給3つのポイント

熱中症を防ぐための水分補給はとても大切ですが、やり方を誤るとかえって体に負担をかけてしまいます。
熱中症もペットボトル症候群も予防するため、次の3つのポイントを意識しましょう。

①「無糖の飲み物を選ぶ」
軽いめまいやだるさのときには、経口補水液を少しずつゆっくり飲むと、悪化を防げます。
ただし、汗をかいていない場合は水や麦茶、ほうじ茶など、糖類が入っていないものにしましょう。

②「こまめに少しずつ飲む」
一度にたくさん飲んだり、喉が渇いてから飲んだりすると、体にうまく吸収されにくくなります。
可能であれば30分〜1時間おきに少しずつ飲みましょう。
朝起きたとき、外出前、運動中はもちろん、運動の前後、入浴前後など、汗をかくタイミングでこまめに水分を摂ることが大切です。

③「塩分も一緒に摂る」
汗と一緒に失われる塩分も補えるよう、必要に応じて経口補水液や塩などを活用しましょう。
経口補水液は自分でも作れます→ こちらも参考になさってください。

今すぐできる熱中症対策

マスク着用時の熱中症リスク対策

マスクをしていると、熱がこもりやすくなるため、熱中症のリスクが高まります。
口元が温まり、呼吸もしにくくなることで、体温が上がりやすくなるからです。

特に暑い日に外を歩いていると、喉の渇きにも気づきにくくなります。
また、マスクをしているだけで疲れやすくなり、頭痛や吐き気を訴える方もいらっしゃいます。

たとえば、人が少ない屋外ではマスクを外して風にあたったり、通気性のよい素材を選んだりするとよいでしょう。
屋内でも長時間作業を続けるときは、マスクを外すのが面倒に感じられると思いますが、マスクをしているときほど、こまめな水分補給と休憩を心がけてください。

睡眠時の熱中症対策

室内にいるときも熱中症になることがあります。火を使って調理する方も、夏場は大変ですよね。
特に高齢者や子どもは暑さを感じにくく、室温が上がっていても気づかないことがあります。
窓を閉めきった風通しの悪い部屋では室温をチェックし、必要に応じてエアコンや扇風機を使いましょう。

夜、寝ている間も汗をかくと水分が失われやすく、知らないうちに脱水状態になることがあります。
寝る前に水分を補給し(飲み過ぎてトイレに起きてしまう方は量に注意)、エアコンを弱めにかけておいたり、タイマー設定を活用するのもおすすめです。しっかり眠ることも体力の消耗を防ぎ、熱中症対策になります。

子どもや高齢者を守るための声かけと観察

子どもは遊びに夢中になって、喉が渇いていても気づかないことがあります。
高齢者は、暑さを感じにくかったり、水を飲むのをがまんしたりすることがあります。

子どもや高齢者は、自分から「具合が悪い」と言えないことが多いため、周りの人が気づいて対処することが大切です。
「今日は暑いけど大丈夫?」「ごはんちゃんと食べた?」「お水飲んだ?」「少し休もう」などの会話も、変化に気づくきっかけとなります。
日ごろから様子をよく見て「顔が赤くないか」「ボーッとしていないか」「汗の量は?」など、小さな変化に早く気づけるようにしておきましょう。

【まとめ】熱中症の予防法と対策


・甘い飲み物の過剰摂取にも要注意
・特に子どもや高齢者は室温チェックとこまめな水分補給が大切
・日常の習慣や環境づくりと暑熱順化が、熱中症予防のカギとなる

熱中症の疑いがあるときは涼しい場所に移動し、衣服をゆるめ、水分と塩分を補給し、「水分を自分で摂れない」「症状がどんどん悪化している」「声をかけても反応が鈍い」などの状態がある場合は、医療機関を受診してください。

運動不足の方は、外出せずにできるオンラインレッスンもぜひご活用ください。

加藤 小百合

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