ホットフラッシュ(冷えのぼせ)改善で夜ぐっすり眠る方法

更年期のホットフラッシュは「女性ホルモンのせいだから仕方ない」と思っていませんか?
「急に顔だけ熱くなって汗がふき出る」「体がほてって眠れない」「手足から熱をうまく逃がすことができず、夜中に目覚めてしまう」そんな日が続くと、気分も落ち込みますよね。
この記事では、薬に頼らずに更年期にありがちな症状を改善する具体的なセルフケアについて解説します。夜ぐっすり眠れるようになるエクササイズも紹介しますので、ぜひご覧ください。

ホットフラッシュとは?

※更年期の症状は個人差があり、何も感じない人もいます

「ホットフラッシュ」とは、更年期前後の女性に多くみられる急なほてりや発汗、動悸、のぼせなどの症状を指します。顔や首、胸まわりなど上半身を中心に突然熱くなり、汗が吹き出すのが特徴です。日本初の女性総理大臣となった高市早苗さんは、40代前半から更年期障害が始まり、初入閣時の会見で寒気を感じていたのに汗が止まらなかったことがあったそう。

実は、私自身も35歳頃にホットフラッシュを経験しています(早っ!)。暑くないのに突然汗だくになり、ビックリしました。その頃は寝る間を惜しんで仕事をしていて、横になっている時にめまいも起こし「これはまずい」と思って生活を改めました。

下半身は冷えているのに上半身だけ熱い「冷えのぼせ」のほか、「夜になっても体温が下がらず寝つけない」「暑くて夜中に目覚めてしまう」方も少なくありません。特に仕事・家事・介護・子育てなどに追われる40〜50代の方は、交感神経(活動モード)が過剰に働いています。副交感神経(休息モード)が働きにくくなり、夜になってもリラックスできず、眠りが浅くなってしまうのです。

ホットフラッシュの原因

ホットフラッシュの主な原因は、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)の急激な低下といわれています。出産直後や更年期にはエストロゲンが急に減ることで、脳の体温調節中枢が混乱し、自律神経が誤作動を起こす。その結果、体温を下げようとして急に汗をかいたり、逆に冷えたりするのです。

ただし、更年期だからといって全員ホットフラッシュになるわけではありません。
東洋医学で冷えのぼせは、体の中で「火」と「水」のバランスが崩れた状態と捉えます。

上半身には火の性質をもつ「心(しん)」、下半身には水の性質をもつ「腎(じん)」があり、上の火と下の水が循環することで体温や情緒が安定すると考えられているのです。更年期のほてりや不眠、イライラは、この循環がうまく働かなくなった結果と捉えます。主な原因は、冷えや胃腸の弱り、運動不足、ストレス、睡眠不足などです。

ホットフラッシュを改善してぐっすり眠る方法

では、ホットフラッシュを改善するにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、食事とメンタル、運動について解説します。

胃腸をいたわる食事

循環が乱れる原因の一つに、胃腸の機能低下があります。胃腸の働きが弱ると、体に必要な気血が十分につくられず、下半身の水が上へ昇れなくなり、上半身に熱がこもってしまうのです。

冷えのぼせ以外に頭痛・口内炎・歯ぐきの腫れ・消化不良・下痢・むくみ・冷え・肌荒れなどがある方は、辛いもの、脂っこいもの、揚げ物、乳製品、甘いもの、冷たい飲み物、生ものは控えめにして胃腸への負担を減らしましょう。また、食事中はよく噛むことで唾液が分泌され、消化が促進されます。

アメリカの医師団体(Physicians Committee for Responsible Medicine)の研究によると、大豆を含む低脂肪のヴィーガン食を12週間続けた女性は、ホットフラッシュの頻度や重症度が(1日1.3回から0.1回へ)平均92%も減少したという報告もあります。さらに平均で約3.6㎏減量した、とのことで減量にはよいかもしれません。

ただし、この研究の対象者は1日に少なくとも2回の中等度から重度のホットフラッシュを訴える40~65歳の閉経後女性(月経停止期間が1年以上10年未満)でした。

閉経前の女性がヴィーガン食を続けると貧血になる可能性もあります。ビタミンB12も不足しやすいため、焼きのり・青のり・青さなどで補いつつ、ご自身の体に合っているかどうかを優先してくださいね。

ここでお伝えしたいのは、大豆やヴィーガン食の効果ではなく、食べものでも変われるということ。食生活が乱れているとメンタルも不安定になります。反対に思い悩み・考えすぎ・不安・過労・ストレス・ネガティブ思考が続くと胃腸が弱り、血の巡りが悪化するのです。

眠れなくなることでさらに考えすぎて、負のループに陥ることも……。とくに胃腸に不調のある方は、焦らず時間をかけて回復させていきましょう。

深い呼吸で自律神経を整える

冷えのぼせ以外に唇・喉・目・鼻・皮膚などの乾燥、寝汗、イライラ、不眠、便秘またはコロコロ便などがある場合は、リラックスすることが大切です。

焦りや緊張は、交感神経を過剰に働かせ、胃腸の働きも悪くなり、ホットフラッシュを助長させてしまいます。目を酷使せず、夜はパソコンやスマートフォンを早めに手放して、何もしない時間を確保しましょう。

また、深い呼吸で横隔膜が動くと血流がよくなり、胃腸の働きも整います。寝る前や気づいたときには次の呼吸法をしてみてください。

リラックス呼吸

・鼻からゆっくり息を吸い、口をすぼめて細く長く吐く
・吐く時間を吸う時間の2倍程度にする

呼吸法を取り入れても眠れない方は、体が疲れていない場合があります。「眠らなくちゃ」と焦ると交感神経が働くため、眠れない時は読書(紙の本)や運動してみるのもおすすめです。ただし、汗をかきすぎると症状が悪化しやすくなるため、運動は軽めにしましょう。

下半身を動かして巡らせる

閉経の前後になると女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、脂肪がつきやすくなって体形の変化で落ち込む方も……。体力のあるうちから、上半身と下半身を巡らせる運動をしましょう。特に骨盤周りを動かすと体の熱(血流)が均等に行き渡り、酸素と栄養が全身に巡り、心も穏やかになります。

また、更年期にイライラしたり不安になりやすくなるのは、セロトニン(神経伝達物質)の不足も原因の一つといわれています。セロトニンは、精神を落ち着かせるため「幸せホルモン」とも呼ばれており、リズム運動であるウォーキングや深呼吸、 朝日を浴びることでも増やせるのです。

激しい運動は必要ありません。むしろ、体力や年齢に合わないトレーニングは逆効果になることも……。ほてりを改善し、ぐっすり眠りたい方はこちらもおすすめです▼

寝る前に足首を回すだけでも血流が促されます。軽いストレッチやウォーキング、つま先立ち、骨盤まわしなど「動かして巡らせる」ことを意識しましょう。無理せずにできることから取り入れてみてください。

ホットフラッシュ改善に関するQ&A

Q1:ホットフラッシュはいつまで続くの?

A1:一般的に、更年期のホットフラッシュは数か月〜数年続くことがあります。産後なら授乳しているかどうか、体質・ストレス・生活習慣によっても期間は異なります。私自身は、漢方、薬、サプリメントなどを足すのではなく、体の巡りを妨げている原因を取り除くことで1か月くらいで改善しました。

ちなみにホットフラッシュでお悩みのクライアントさんは、私がホットフラッシュを経験した時と同じ薬を飲んでいたため、薬の影響もあったかもしれないと最近気づきました(知りたい方は直接聞いてください)。

汗をかくのは隠せなくて恥ずかしかったり、不安になったりすると思いますが、原因が推測できたらそれを除くことから始めてみてはいかがでしょうか?

Q2:温めたほうがいい? 冷やしたほうがいい?

A2:お腹や下半身が冷えている場合、温めるのも有効ですが、理想は「冷やさず・温めすぎない」こと。漢方や鍼灸、ツボ押し、足湯や湯たんぽなどで温めることで巡りをよくすることもできますが、外から温めるだけでなく、冷やさないことも大切です。

ウィンドブレーカーなどで冷たい風を防いだり、腹巻きやレッグウォーマー、ひざ掛けを使ったりして冷やさない工夫をしましょう。冬の靴下は、ウールなどの天然素材がおすすめです。

Q3:ホルモン補充療法(HRT)は受けたほうがいい?

A3:米国厚生省(HHS)のプライマリケアと予防に関する諮問機関であるU.S. Preventive Services Task Force (USPSTF)は2002年に閉経後の女性に対してホルモン代替療法(HRT)を否定する勧告を出しました。閉経後のエストロゲンとプロゲスチン投与は、乳がんや血栓症、脳卒中、胆嚢疾患、心筋梗塞の発症リスクを増やすことがわかったからです。

2013年以降の研究では認知症(65歳以上の女性)、尿失禁の増加リスクも挙げられ、日本でも精神状態に影響を与える可能性があるため、慎重に進めることが推奨されています。

【追記】米食品医薬品局(FDA)は2025年11月10日、更年期障害の治療に使われるホルモン補充療法(HRT)の薬剤について、がんや心疾患など一部の副作用リスクに関する表示(最も厳しい「黒枠」警告)を今後、義務付けないと発表。エストロゲン単独投与による子宮内膜がんリスクの警告は残す方針だそう。

ホットフラッシュは「病気」ではなく、体の巡りが乱れている「サイン」です。そのサインを無視して症状を抑えても、体の巡りが悪かったらどんなお薬でも効果は半減するのではないかと思います。HRTを選んだとしても、体の声を聴くことは忘れないようにしましょう。

Q4:更年期以外でもホットフラッシュは起こる?

A4:更年期以外でも、強いストレス・自律神経の乱れ・甲状腺の異常・貧血・低血糖などが原因で発汗やのぼせ、動悸が起こることもあります。そんな方の共通点は、体の巡りが悪くなり、全身のバランスが崩れていること。

ただし、更年期障害だと思っていたら、実は別の病気だったというケースもあります。緊張の多い生活や睡眠不足、運動不足または運動のしすぎ、食生活の乱れなど、原因が思い当たらない場合は、医療機関で検査を受けるのもよいでしょう。

まとめ

閉経前後の約10年間(45~55歳頃)を「更年期」と呼び、更年期障害や更年期症状と呼ばれる心身のさまざまな変化は個人差が大きいため、ほとんど不調を感じない人もいます。
高市早苗総理大臣は、更年期に関節リウマチで人工関節になった経験もあり「学校や職場でもその女性が辛い時に、男性にもちゃんと理解していだけるように。そういう啓発活動も進めてまいりたいと思います」と語っていたそうです。
まだ周囲の理解を得るのも大変かもしれませんが、「平気なハズ」と我慢を続けると日常生活に支障をきたす人もいるため、無理はしないようにしましょう。

人生を季節に例えると更年期は秋。夏には夏の過ごし方があるように、秋(更年期)は冬(老年期)に備える必要があります。更年期の症状が出たら「今までの暮らし方を変えていく必要がありますよ」というサインではないでしょうか?

秋はセンチメンタルになりやすいように、更年期は男女ともにうつになりやすい時期。重症化する前にご自身の体の声に耳を傾けていただけたらうれしいです。

実は私、20代前半で「更年期障害と同じような状態だよ」と婦人科で言われ、漢方薬を処方された経験もあります。その時はわかりませんでしたが、自律神経が乱れていたのです(改善する感じがしなかったので、婦人科への通院はやめました)。

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【参考文献】
Diet quality, body weight, and postmenopausal hot flashes: a secondary analysis of a randomized clinical trial

エビデンスに基づきホルモン代替療法を否定、米国厚生省が勧告

The Women’s Health Initiative Hormone Therapy Trials: Update and Overview of Health Outcomes During the Intervention and Post-Stopping Phases

高市早苗氏「人工関節」を告白 更年期の症状を気付かず放置 初の女性総理目指し「ホルモンバランス」も言及

HHS Advances Women’s Health, Removes Misleading FDA Warnings on Hormone Replacement Therapy

加藤 小百合

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