健康診断で「血圧が高い」と言われ、「更年期のせい?」と不安になっていませんか? 高血圧は自覚症状がないことも多く、慌ててしまいますよね。
実は、更年期の高血圧は塩分だけが原因ではなく、ホルモンや自律神経も関係しています。この記事では、薬に頼らず血圧を整えるための生活習慣・食事・運動のコツをわかりやすく解説。「できれば薬は飲みたくない」――そんなあなたはぜひ読み進めてください。
目次
なぜ更年期で血圧が高くなるのか
「最近、健康診断で血圧が高いと言われた」「以前は低血圧だったのに」――こうした変化を感じる女性は少なくありません。更年期を迎える40代以降は、血圧が急に上がることがあるのです。その大きな理由の一つが、女性ホルモン「エストロゲン」の減少です。
エストロゲンには血管をしなやかに保ち、血流をスムーズにする働きがあります。
しかし、このホルモンが減ると血管が硬くなり、血液を全身に送るためにより強い圧力が必要になります。その結果、血圧が上がりやすくなるのです。
また、エストロゲンは自律神経にも深く関わっています。自律神経は体温や心拍、血圧を自動で調整するシステムですが、ホルモンのバランスが崩れることで働きが不安定になり、血圧も変動しやすくなります。
さらに、40代・50代は心身ともに変化の多い時期。仕事と家庭の両立、親の介護、子どもの独立などストレスが続くと「交感神経」が優位になり、血管が収縮して血圧が上がるのです。また、忙しさからくる睡眠不足や運動不足、冷えなども血圧上昇を助長する要因となります。

ホルモン・自律神経・生活リズムのバランスが崩れることで、血圧は不安定になりやすくなるのです。「更年期だから仕方ない」と片づけず、その背景にあるホルモンや神経の変化を理解することが、これからの健康管理の第一歩となります。
「血圧が高い=悪」ではない
今、日本では成人の3人に1人が「高血圧」といわれています。しかし、それは本当に「病気」なのでしょうか。
1970年代、日本の高血圧患者は100万人に満たなかったのに、今では4,000万人を超えています。患者数が急増した背景には、血圧の基準値が引き下げられたことがあります。
かつては最高血圧が180mmHgを超えた人が治療対象でしたが、現在では降圧目標が「130/80mmHg」未満に統一されてしまいました。健康な人まで「患者」として扱われるケースが増えているのです。
「血圧の基準が適正とは言えない」という話は、もう10年以上も前から一部の医師が訴えていました。年齢や性別を無視して決められた健康診断の基準値、そして「血圧を下げなくてはいけない」ということを疑ってもいいのではありませんか?
そもそも血圧とは、血液が血管の壁を押す「力」のこと。
体のどこかで血流が滞ると、心臓はより強い力で血液を押し出そうとします。
つまり血圧が上がるのは、体が生命を守ろうとする自然な反応でもあるのです。
もちろん危険な高血圧や心疾患を伴う場合は、「命を守るための応急処置」として降圧剤が必要になることもあります。しかし、薬を飲み続けることで体本来の自然なバランスを崩し、「めまい」「だるさ」「ふらつき」を訴える人がいらっしゃいます。
薬で血圧を無理に下げ続けると、脳や臓器への血流も減り、酸素や栄養が行き届かなくなる。その結果、代謝の低下、疲労感・冷え・集中力低下などが起こりやすくなるのです。
血圧が高いということは、体のどこかで血流が滞っているサインでもあります。つまり、血圧を「下げる」のではなく「滞りをなくす」ことで、根本に改善するのです。
薬に頼らず血圧を整えるセルフケア
血流を妨げる原因は、実は日常の中にあります。
・肩や首がこっている
・足が冷える、むくむ
・ふくらはぎや太ももが硬い
・猫背や反り腰など姿勢に問題がある
・ストレスが多く、呼吸が浅い
これらはいずれも血流を阻害し、心臓に負担をかける要因です。
体が「もっと血を送らなければ」と判断すると、自然に血圧を上げて全身に血液を届けようとしてくれる。
つまり、血圧の上昇は体がサボっているのではなく、助けを求めている状態なのです。
ここでは、薬に頼らず血流を整え、自然に血圧を安定させるためのセルフケアを紹介します。

①入浴で腎臓を温める
湯船に浸かると、腎臓のまわりの血流が改善し、水分代謝がスムーズになります。
腎臓は血圧の調整を担う重要な臓器のひとつで、冷えて働きが悪くなると、血圧が上がりやすくなります。
40℃前後のお湯に10~15分程度浸かるだけでも効果的。冬場は浴室の温度差にも注意し、脱衣所を温めておきましょう。
②深い呼吸を意識する
ストレスや不安で呼吸が浅くなると、交感神経が優位になり、血管が収縮して血圧が上がります。腹式呼吸で「吸う:吐く=1:2」を意識してゆっくり吐く時間を長くすると、副交感神経が働き、血管がゆるみます。全身が温まりやすくなることで、自然に血圧も落ち着いていくのです。
③姿勢を整える
長時間同じ姿勢をとっていると、血管を圧迫することになります。また、猫背などで呼吸が浅くなることも、血流が滞る原因になります。
まずは「骨盤を立てて座る」意識を持つことから始めましょう。背筋が自然に伸び、肺が広がることで呼吸が深くなり、心臓への負担も軽くなります。
④ウォーキング
軽い有酸素運動は血管の弾力を保ち、自律神経を整える効果があります。
特にウォーキングは、もっともシンプルで続けやすい降圧トレーニングです。
高血圧症を改善するには「ややきつい」と感じる程度を目安に、定期的に(できれば毎日30分以上)運動しましょう。1回につき少なくとも10分以上持続し、合計して1日40分以上運動を実施することが推奨されています。ただし、全く運動していない方は、無理のない範囲から始めてください。継続することで血流がスムーズになり、薬に頼らなくても血圧が安定しやすくなります。
⑤足指・ふくらはぎを動かす
脚の筋肉は「第二の心臓」と呼ばれています。ウォーキングや外出の難しい方は、足指を1本ずつ動かしたり、ふくらはぎを軽くマッサージするだけで静脈やリンパの流れが促されます。朝、血圧が高い方やむくみやすい方は、就寝前に行うとよいでしょう。
天然の降圧食:お味噌汁
多くの人が「血圧を下げるためには減塩が大切」と信じています。しかし、すべての人に極端な減塩が必要なわけではありません。むしろ、健康な人が過度に塩を控えるとナトリウム不足(低ナトリウム血症)を起こし、倦怠感・食欲不振・めまい・痙攣などを引き起こすおそれがあります。
塩は生命維持に欠かせないミネラル
血圧を整えるために大切なのは「減塩すること」ではありません。
「敵に塩を送る」
上杉謙信が、今川・北条の塩止めで苦しんでいる武田信玄に塩を送ったという逸話からきている言葉です。
人は適切な塩分がなければ生きていけません。体内の塩分が不足すると、筋肉や神経の働きが鈍り、全身の代謝が低下します。
ノーベル賞を2度受賞したアメリカの量子化学者ライナス・ポーリング博士は、「すべての病態、すべての病気、すべての病弊を追究すると、ミネラル不足に行き着く」と語りました。現代人のミネラル不足は、加工食品中心の食生活や過度な減塩が影響していると考えられます。
ナトリウム(塩分)は体内の水分量や血圧を保ち、カリウムは余分なナトリウムを体の外に排出します。この2つをバランスよくとることで、体は自然に血圧を安定させることができるのです。
塩を減らすより「質」を見直す
塩には大きく分けて2種類あり、市場に出回っている塩の8割が精製塩です。
精製塩:99%以上が塩化ナトリウムで、微量ミネラルがほとんど含まれない
自然塩(海塩):マグネシウム・亜鉛などのミネラルを豊富に含み、酵素の働きを助ける
本来の日本の塩は豊富なミネラル、微量分子を含んでいてバランスが取れていました。しかし、海水の成分の中から塩化ナトリウムだけを取り出した精製度の高い塩を摂り続けると、体内のミネラルバランスが崩れ、血圧や代謝にも影響します。
一方、原料は海水100%、工程は天日、平釜といった自然塩は血流をよくする助けになります。つまり、「塩を減らす」よりも「良質な塩を選ぶ」ことが大切なのです。
血圧サポート調味料
味噌は、塩分を含みながらも血圧を整える力をもつ、素晴らしい発酵食品です。研究によると、通常の味噌汁を1日2杯飲んでも血圧は上がらず、むしろ下がる傾向が確認されています。
味噌に含まれるペプチドには、ナトリウムの排泄を促す作用があり、大豆由来のレシチンは血管をやわらかく保つ働きがあります。さらに、味噌汁に野菜や海藻類、きのこ類を加えることで、カリウムやマグネシウム、食物繊維などを摂取でき、余分な塩分を体外に排出しやすくなる。味噌汁は、まさに「日本人の天然サプリメント」なのです。

また、1日大さじ2杯程度のお酢やレモン汁を摂り続けると、血圧が低下するという研究もあります。お酢には血糖値の上昇を抑えたり、脂肪の燃焼を促したりする作用があり、肥満防止効果も期待できます。おいしく食べて、血圧を安定させていきましょう。
薬に頼る前にできること
血圧の数値はあくまで一つの指標にすぎません。数字を下げることだけに囚われてしまうと、体の本来の目的 ──「血液をすみずみまで行き渡らせること」── を見失ってしまいます。
降圧剤は必要な人にとっては命を守る薬ですが、長期的な服用には副作用として、認知症や心疾患リスクが指摘されています。もちろん自己判断で薬をやめることは危険ですし、断薬する場合でも生活習慣の改善は必須です。
更年期に限った話ではありませんが、私たちの体は日々変化しています。普段は正常でも病院で測ると高くなる「白衣高血圧」や、朝だけ血圧が上がる「早朝高血圧」もあります。その日の気温、食事、ストレス、睡眠によっても血圧は上下します。こうした変化を見逃さないためにも、家庭での血圧測定を習慣にしておきましょう。
「今日は呼吸が浅いな」「足が冷えているな」といった体の小さな変化やストレスに気づくことが、高血圧を予防し、体を整える第一歩です。高血圧のきっかけは、ストレスであることが多いため、食事や運動を試しても改善がみられない方はぜひご相談ください。
加藤 小百合
【参考&おすすめ書籍】
『医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法』近藤 誠 著(アスコム)









